当時加の流通業界の多数意見としては、「千里中央のショッピングセンターは、既存の鉄道網に依存しない車交通を前提とした正統派のショッピングセンターだけど、玉川高島屋は駅前立地という日本型大型店と、自動車交通に依存する本物のショッピングセンターとの折表型だ。
千里は発展するけど、二子玉川は失敗するだろう」というようなものだった。
実際には、千里中央のショッピングセンターは、滋賀銀行で上司の信頼厚いーがなんと九億円という大金を横領した事件で、この金を貢がせた男が彼女を口説いた誘惑の舞台として勇名を馳せた以外は、まったく鳴かず飛ばずだ。
当時関西に住んでいた人に聞いても、「首都圏ならざらにある平凡な郊外ショッピングセンターで、なんであんなに貧乏臭いところが危険な誘惑の舞台になったのか、分からない」ということだった。
その後、千里ニュータウンは、日本中のニュータウンの例にもれず、入居した世帯のお父さんたちが歳を取るにつれて街全体が老化してしまった。
いまはもう、い?王要テナントの撤退でショッピングセンター全体が店仕舞いに追い込まれでもおかしくないくらい寂れきっている。
何度もいったが、「アメリカ現在を見ていれば日本の将来が分かる」という発想は、愚劣で奴隷的な欧米崇拝思想だ。
現実の日本ではどうなっているか?千里ニュータウンが寂れていく一方で、首都圏でも有数の私鉄ブランドに成り上がった田園都市線の拠点駅の真ん前にある玉川高島屋は、日本中の郊外型ショッピングセンターの中でも、別格の扱いを受けている。
「高島屋の全店舗の中でいちばん客単価が高い」という話があるが、三、四年地元に住んだ生活実感からいうと、このうわさは本当だろう。
そこで、この二子玉川駅の拠点性をさらに高めるための、大井町線の延伸だ。
聖ドミニコ学園から、砧公園を通って、祖師ヶ谷大蔵駅で小田急線と交差する。
さらに北上を続けて、駒大グラウンドを通って、日本有数の元気な駅ちとせからすやま〈がやま前商届街がある千歳烏山駅で京王線と交差して、久我山駅で井の頭線と交差して、JR西荻窪駅が終点というのはどうだろうか?もちろん、二期として、西荻窪駅から、上井草駅で西武新宿線と交差して、石神井公園駅で西武池袋線と交差して、谷原の交差点を抜けて都営地下鉄大江戸線の終点になっている光が正駅まで延伸することを考えてもいい。
都庁所在地として二子玉川を選んだ場合の利点は、こういう電車網の整備を、もう始まっている駅前再開発事業のスケールアップや、駅周辺道路の一帯整備事業と連動して考えることができることだ。
すでに再開発準備組合が、二子玉川駅を含む・二ヘクタール(二万二000平方メートル)の土地に、延べ四一万平方メートルの床面積を持つオフィス、店舗、ホテル、住宅からなる複合再開発の基本設計を決めている。
さらに、この大型再開発と連動して、国道二四六号(都心から渋谷までは青山通り、渋谷から先は玉川通りと呼ばれている幹線道路だ)、多摩堤通り、駒沢通りの拡幅と、補助的な道路の新設もプランに入れている。
ここに、大井町線の延伸で、いままで電車の便が意外に悪かった世田谷区の「奥地」や練馬区の谷原周辺からも集客できるという要素が加われば、向かうところ敵なしだろう。
二子玉川の場合は、どこに都庁舎を持ってくるかという点でも、吉祥寺ほど難しくはない。
多摩川の河川敷で、広々とした土地が有効利用を待っているからだ。
もちろん、一年に一度とか、二年に一度とかの大水害に対する備えは万全にしておかなければならない。
しかし、それは大掛かりな高床式の庁舎にするとか、いくらでも技術的に解決の道はある。
吉祥寺やニコ玉(二子玉川)が人気のある街なのに比べると、何かにつけて地味な京王線沿線の調布というのは、あまり注目を引かないかもしれない。
だが、調布駅前の利点は、もう東京都が総事業費一億円の予定で、新宿方向から見て調布の三駅手前の柴崎から一駅先の西調布までと、調布から枝分かれしている相模原線で調布の次の駅になる京王多摩川までを、地下化する計画を決定していることだ。
当然、いままで鉄道線路に使われていたスペースが空いて、再開発できることになる。
もしこういう企画が東急線沿線で持ち上がったら、東急グループは間違いなくどういう開発をするのがいちばん周辺地域の価値を高めるかということについて、いろいろプランを描いてくるだろう。
その点、京王電鉄は歯がゆくなるくらい慎重な会社で、「あくまでも東京都主導でやるプロジェクトだから、弊社は応分の負担を負うことはあってもついて行くだけ」というようなことを言っている。
しかし、地味な京王電鉄の社風が影響して見落とされがちだが、調布駅前は立地条件としては非常におもしろい。
通勤電車としての中央線のほぼ真ん中に当たる吉祥寺・三鷹の二駅にも、川崎縦貫鉄道の出現で発展しそうな川崎市北部の多摩川沿い地域にもほぼ等距離だ。
さらに、中央線から北側は、極端に鉄道のネットワーク性ということに鈍感な西武鉄道の縄張りなので南北方向の公共交通機関が不足しているが、人口はけつこう密集している。
この地域からも、交通機関さえ整備されれば大きな集客が見込める。
おまけに、ちょうど調布駅前に、なかなか見どころのある新興不動産開発会社が本社を構えている。
いままで日本の住宅産業では不当に軽視されてきた、タウンハウスの開発に力を入れている会社だ。
タウンハウスは、マッチ箱のようにせせこましい戸建て分譲住宅や、しょせんはコンクリートの箱にすぎないマンションよりはるかに景観のすぐれた街並みを形成することができる。
一種住宅専用地域というような、建ペい率・容積率に縛りのきつい土地で最大限の床面積を確保しようとしたら、ドライエリアのある地下と地上二階を縦割りでメゾネットとして使うタウンハウスが最適だ。
いまだに住宅金融公庫の融資条件などでは、タウンハウスは「長屋造り」ということで「一戸建て」や「共同建て住宅」より不利な扱いになっている。
しかし、そういう不利な条件のもとでも着実にタウンハウスの実績を重ねてきたこの会社は、余計なおせっかいの多い住宅金融公庫が廃止されて、民間金融機関が経済合理性にのっとった融資をするようになれば、もっと伸びるだろう。
この会社が地盤としている京王線沿線は、タウンハウスの整然としていて、しかも画一的ではない街並み形成があちこちで見られ、小田急線や中央線沿線よりずっと景色のいい郊外電車路線になるだろう。
とにかく、京王線の地下化で開放される地上のスペースについては、いまのところなんの利用策も検討されていない。
新都庁の庁舎を建てるのも、十分真剣な検討に値するるな選択肢だろう。
そして、北への大深度地下支線建設を考えどるなら、調布駅周辺の線路や駅の地下化と一緒にやったほうが、後からやるよりはるかに効率がいい。
ひとつ実際的な問題がある。
それは、都営地下鉄新宿線と直通運転をしている電車はほとんど全部橋本行きだということが示すように、いまや枝分かれした相模原線のほうが本線のようになっている。
だから、これを北に延伸して新宿には行かずに京王八王子行きの本線と直角交差するようにすると、ダイヤが大混乱するだろうということだ。
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